カウンセリングというと悩み相談を連想するヒトもまだ少なくありません。ソファーにカウンセラーがいて、二人で時間をかけてもやもやしていることを話していく。そうするとどうやら何となく問題が解決してすっきりとするらしい。そういったイメージがカウンセリングには付いています。もちろん、カウンセラーにとってクライエントの話をきちんと聴くことは、最も基礎的な技術です。カウンセリングで話すことを通じて、自分の感じていること・考えていることに気付くことで、自分に振り回されることは少なくなります。
ここで「問題」を考えてみます。悩んでしまうことや落ち込んでしまうこと、なぜかいろいろなものがうまくいかなくなってしまうことなど、広い意味での問題は、自分と環境から成り立っています。24時間365日、100%問題行動を示す人、というのは考えてみるとほとんどいません。誰しもが問題を感じない瞬間を持っていますし、ほっとできる、比較的安心して気を抜ける時間を持っています。カウンセリングで自分を変えて、自分のいる環境で問題を感じないようにしていくことは大切なことですが、もう一つの方向として、環境を変えていくことは当然考えられるべきことです。ちょっとした配慮や、もう少し違う人間関係、自分の座る位置などを変えてみることは、意外に問題のあり方に大きな変化をもたらします。
「何をそんな今更当たり前のことを。それができたら苦労しない。」と感じてしまいますが、ここはきちんと立ち止まって考えてみましょうか。人は調子の良いときには、言葉ではっきりとした意識を持つこと無しに、自然に自分に合うように環境を調整しています。子どもなりに仲の良い集団を作ったり、大人でも、休憩中に声をかけたりちょっとしたお菓子をあげたりして、自分の居心地の良い環境の調整を行なっています。けれども、調子が悪いときにはそこまで気付いて、体を動かすことが難しくなります。ましてや調子の良いときならがまんせずに「やめてほしい」と言えることも、自分の調子が悪いときには耐えてしまうことも多いのです。なぜなら、「悪いのは自分であって周りの誰かではないのだから」、「つらいのは自分の責任なのだから。」このような考えからは自分をよりつらくさせる方向に行く選択が出てきてしまうことや、環境を変化させる方向に目が向かなくなってしまうのは理解できることです。
弱っているときには、当然人に頼ったり、自分の環境を変えようと想像することも難しくなります。様々な不安や恐怖が環境を変えることを邪魔します。自分が弱っている時には、親や先生、友人や上司に自分の環境を変えて欲しい、こうしたいと直接要望を伝えることは難しいことが多いです。けれどもそういったつらいときこそ、まさに今の環境に調整が必要なことも示しています。現実のそれぞれの立つ位置で、どの程度の調整が可能なのか、もう一度信頼できる人と話し合って、環境調整の可能性に目を向けてみることは大切なことです。環境の問題は心の問題よりも目に見え易く、現実的な変化を計り易いものです。環境が自分を変え、自分が環境を変えています。もう一度環境調整に目を向けてみましょう。