時間は、あるときには回復への頼りになるパートナーでもあり、またあるときには難しい状況へ追い込む手強い敵でもあります。心の困難の真っ最中にあるときに時間を味方にできるかは、文字通り生死を分けることもあります。
今の状態が耐え難いものであればあるほど、一回の大きな決断や行動で全ての状況を変えてしまいたい誘惑に駆られます。そのようなときに起こす行動は、より大きな力を必要として着地地点もあやふやなため、極端で危ういことが多いようです。不安や落ち込みが大きいときには、自分の行なわなければいけないであろう物事を進めることができません。その上、状態が悪いときには、物事が前に進んでいないこと自体がプレッシャーと化します。
いまを強く否定することは、時間を克服することのできない大きな敵にしてしまいます。一日を過している間に、ことあるごとに自分や世界を責めている状態は、それがどれほどきついことかは想像に難くありません。私たちは限りある人の身として、そのような時間と面と向かって戦って勝つことはできません。相手はまさにたっぷりと時間をかけることができます。時間を味方にするためには、それがどのようなものであれ、今の状態を先入観を除いてなるべくそのままに近い形で認識する必要があります。そして、今の困難は好んで招いたものではなく、改善するために力を尽くしているのだと自分を理解することも。
焦る気持ちは理解できます。それでも、いまがどれほど悪く見えたとしても、いまの状態を維持していくことには大変な努力が含まれている点に、本人も周りも注目してもらいたいのです。見た目に何も変っていない様に見えたとしても、見えないところで次の変化に向かった準備が進んでいます。いまできることに時間をかけることは、こと心の困難に関しては時間を味方にすることと同じことを意味します。きついときには何もせずにただ時間をやり過ごすことも、自分を守る意味があります。時間を味方にすることで、少しずつ回復への道を進んでいくことができるのです。