トラウマについて

トラウマとは?

トラウマを抱えている人のイラストイメージ

  最終更新日:2025年2月6日 

執筆:公認心理師 佐藤康幸

 

私たちは生きている中で、思いがけずこころに深い傷を負うような出来事に出会うことがあります。そうした出来事がもたらすこころの傷を、心理学の分野では「トラウマ」と呼びます。

 

トラウマとは一体どのようなものなのでしょうか?また、それが日常生活にどんな影響を与えるのでしょうか?本ページでは、トラウマの基本についてわかりやすく解説していきます。


トラウマとは誰にでも起こりうるもの


 

「トラウマ」と聞くと、自分とは無縁だと感じる方もいるかもしれません。しかし、トラウマは特別な人にだけ起こるものではなく、誰にでも起こりうる心の反応です。

例えば、次のような出来事がトラウマを引き起こすことがあります。

  • 自然災害や事故に巻き込まれる
    地震や台風、交通事故など、突然命の危険に直面する出来事。
  • 暴力やいじめの被害を受ける
    身体的・心理的に傷つけられるような経験。
  • 大切な人との別れや裏切り
    強い信頼を寄せていた相手から傷つけられるような出来事。

これらの体験をしたとき、私たちのこころは「もう安全ではない」と感じ、体とこころがその出来事に備えたままの状態になってしまいます。これが、トラウマがもたらす反応の一つです。


トラウマの影響:こころとからだに現れるサイン


 

トラウマがもたらす影響は、こころだけに留まりません。こころと体は密接につながっているため、トラウマはさまざまな形で私たちの生活に影響を与えます。

 

◆こころへの影響

トラウマを抱える人は、以下のような感情の変化を感じることがあります。

  • 突然の不安や恐怖感が押し寄せる
  • 以前は楽しかったことへの興味を失う
  • 急に怒りっぽくなったり、イライラする

これらは、こころがまだ「安全ではない」と感じているサインです。

 

◆体への影響

トラウマは体にも影響を及ぼします。具体的には、以下のような症状が現れることがあります。

  • 慢性的な疲労感やだるさ
  • 胃の痛みや頭痛が続く
  • 寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなる

こころと体の両方に現れるこれらのサインは、無意識のうちに生活全般を難しくする原因になることがあります。


トラウマを放置するとどうなる?


 

トラウマの反応は、時間が経つにつれて薄れていく場合もあります。しかし、何らかのきっかけで記憶や感情が再び蘇り、つらい感覚が「今ここで起こっているように」繰り返されることも少なくありません。これを「フラッシュバック」と呼びます。

例えば、事故のトラウマを抱える人が、似たような状況を見るだけで心臓がドキドキして冷や汗をかくような体験をすることがあります。また、つらいい感情を感じたくないために、人との関わりを避けたり、外出を控えるようになることもあります。

こうした影響が続くと、日常生活や人間関係に支障をきたすことがあります。特に、自分でも気づかないうちに無理をしている場合、心身の不調がさらに悪化してしまうこともあります


トラウマから回復するために


 

トラウマを抱えているとき、まず大切なのは「自分を責めないこと」です。トラウマを引き起こした出来事の多くは、自分でコントロールできない外部要因によるものです。そのため、「もっとこうすれば良かった」という後悔や自責の念を感じる必要はありません。

次に、こころと体のケアを心がけましょう。以下のような方法を試してみてください。

  1. 深呼吸や瞑想を取り入れる
    緊張状態を和らげ、リラックスする効果があります。

  2. 生活リズムを整える
    十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけることで、体が回復しやすくなります。

  3. 話せる人を見つける
    信頼できる友人や家族に話すだけでも、心が軽くなることがあります。

もし、自分だけではどうにもならないと感じたら、専門家に相談することを検討しましょう。心理カウンセラーやセラピストは、トラウマに対する具体的なアプローチを持っています。


トラウマと向き合う


 

トラウマは、一見乗り越えられないように思えることもあります。しかし、適切な方法で向き合えば、少しずつ回復していくことができます。

「無理をしない」「一人で抱え込まない」という意識を持つことが大切です。そして、どんな小さな一歩でも構いません。こころと体を守るための行動を、今日から始めてみてください。