夫婦カウンセリングとは|すれ違いから“ふたり”を取り戻すためにできること

夫婦のすれ違いのイメージイラスト画像

  最終更新日:2025年7月24日 

執筆:公認心理師 佐藤康幸

結婚して10年。同じ家にいても、こころの距離がどんどん遠くなっている気がする。

そんなふうに感じたことはありませんか?

 

声をかけようとして言葉を飲み込んでしまう。

 

「またうまく伝わらないかもしれない」「どうせ分かってもらえない」と、こころが小さくしぼんでしまう。

 

その行動の裏にあるのは、ただ「そのままわかってほしいだけなんだけど」という願いかもしれません。

 

本ページでは、夫婦カウンセリングについて解説していきたいと思います。

夫婦(カップル)カウンセリングが増えている理由

2000年代にカウンセリングを行ってきた中での肌感覚として、夫婦(カップル)カウンセリングを行う機会は増えてきています。

 

メンタルの問題で個人でカウンセリングを行うことだけではなく、夫婦の間での問題や行き違いについて、「話をすること」の場所としてカウンセリングを利用しようということがだんだんと当たり前のことになってきています。

 

「夫婦なんだから」「家族なんだから」家で話をしたらいいのに、というわけにはいきません。

 

どうして家族になってしばらくすると心の内を話すことが難しくなってしまうのでしょうか。

 

 お互いを気遣っているのにうまく話ができないことにはいくつかの理由があります。

 

近すぎる距離の難しさ

こころには、適切な距離があります。

 

家族になってこころの距離が近くなることはここちの良いことです。お互いの好きな食べ物がわかって、話さなくても今日一緒に見るドラマの楽しみポイントが伝わる。

 

言わなくてもお互いを大事だとわかるのは安心です。

 

けれどもこころが近くなりすぎると、例えば洗い物を片付けなかったときに、「私にやれって言っているんだ」と受け取ってしまうことがあります。

 

「なんでこれがわかんないんだ」「こうしてくれないのは私を無視しているんだ」そんなふうに相手がこう考えている、というのがわかってしまうようになってしまいます。

 

一方、職場のような関係では、「説明する」ことが前提です。こころの距離は離れている分、わかってもらえないこともある種当然として話をすることができます。

 

 こころの距離をうまく調整できないとすれ違いが起こりがちです。

 

「わかっているはず」という思いが、だんだんと言葉を言えなくさせたり、強い言葉を使ってしまったりすることになりますよね。

 

そんなときに、他者として、こころの距離を調整する存在としてのカウンセラーがいることで話しやすくなります。

 

パートナーに、ではなく、パートナーが聞いている場でカウンセラーに私の話をする。そうすることで、ずいぶんと夫婦で聞きやすい話ができるようになります。

忙しさが奪う、こころの余裕

お互いの仕事、子育て、家事、様々な手続き、SNSにストリーミングサービス、自己研鑽、趣味の時間。

現代の生活ってとても忙しいですよね。そして常に携帯が音を鳴らし、そちらにも注意が引っ張られてしまう。

 

気がついてみると、家族とゆっくり何気ない話をする、そんな一見当たり前のことが難しい時代です。

 

SNSにはすぐに反応して共感できるのに、目の前の家族には共感できない。そんな事が当たり前になりつつあるのかもしれません。

 

私達は環境に左右される生き物でもあります。

 

いつもの部屋ではむずかしいことも、カウンセリングという設定を利用することで、1時間お互いの話にただ耳を傾け、自分が感じていることを話し、批判ではなく「そうだね」と話を聞く。

 

そのような時間の設定を意識して持つことがどれだけ大切なことなのか。そのような時間を意識して持つことが大事な時代でもあります。

「ふたり」の会話

忙しさの中で、「親として」「働く人として」などの役割は果たせても、「ひとりの私として」「ふたりのパートナーとして」話すことが、気がつくと難しくなっていることがあります。

 

「今日こんな事があって・・・」

 

 スマホを見ながら「ふーん、そー」

 

「もういい!」

 

こういうことって起こりがちです。

 

 

日々の生活では、「親」だったり、「働く人」だったり、「家事をする人」だったり、「介護する人」だったりと、それぞれの役割をこなすことで精一杯です。

 

けれども、夫婦では、パートナーとは「ふたりで」話をしたい、大事にされたい、大事にしたい。そんな気持ちを私達は持っています。

 

けれども、今「親モード」で話をしているのか、それとも「私モード」で話をしているのか?

 

一緒にいる時間が長くなっていくと今お互いにどのモードなのか、そしてどんなモードを期待しているのかにズレが出てきます。

 

そして役割がズレたコミュニケーションはこころを傷つけてしまいます。

 

こころが傷つくと、自分を守るためにコミュニケーションを避けたり、相手を傷つける行動を取ってしまいます。

 

カウンセリングではそのような防衛から離れて、役割の調整をしながら、お互いの思っていること、そしてそう言われて自分はどう感じたのか、ということに目を向けていきます。

夫婦の関係は更新できる

「結婚当初はうまくいっていたのに、なぜ今ギクシャクしてしまうのか」

 

「お父さん、お母さんとしては話ができるのに、パートナーとしてはちょっと・・・」

 

「老後を一緒に過ごすイメージが湧かない」

 

 夫婦関係は固定されたものではなくときとともに変化し、更新されていく必要があります。

 

けれども人生の節目や、年齢を重ねた体調の変化のタイミングなどで、対話のズレが起きやすくなります。

 

特に現代は核家族化の進展と人生100年時代となり、家族の中での役割も大きく変化します。

 

ふたりの時間があり、家族の時間があり、仕事をやめたあとの時間があり、健康も大きく変わっていきます。そのような大きな変化の中で二人の役割も期待も変わっていく必要があります。

 

 

カウンセリングは、「関係を更新する」ための場でもあります。

これまで夫婦として積み重ねてきた時間を大切にしながら、“これから”のふたりに合った形を一緒に見つけていきます。

安心して話せる「話」の力|安全な場としてのカウンセリング

夫婦カウンセリングで最も大切な機能は、「カウンセリングは安全な場である」ということです。

 

傷つきたくない、私の話なんかに興味は持ってくれないんじゃないか?こんな事を言ったら幻滅されてしまうのではないか?

二人で話そうとするといろいろな防衛の気持ちが出てきて、素直に話すことが難しくなってしまいます。

 

夫婦カウンセリングは、「うまくやるための指導」ではなく、「話せる時間と空間をつくること」そのものが目的です。

 

話すことが難しくなっている今だからこそ、「聴いてもらう場」がどれほど大切なのか・・・今一度、思い出してみませんか?