最終更新日:2026年7月11日
執筆:公認心理師 佐藤康幸
身体に残るトラウマとは、強いストレス体験の後も心身の防衛反応が続き、緊張や警戒、不安などが残る状態を指します。過去の出来事そのものではなく、そのときの反応が現在にも影響していると考えられています。今回は、身体に残るトラウマの仕組みや、現れやすい反応について解説していきます。
身体に残るトラウマとは
身体に残るトラウマとは、強い恐怖や圧倒される体験をした後、その出来事が終わったにもかかわらず、心や身体が危険に備え続けている状態を指します。
トラウマというと、「つらい記憶」や「こころの傷」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年では、トラウマは記憶や感情だけでなく、身体の反応とも深く関係していることがわかってきています。
トラウマは、過去の出来事そのものが身体に保存されているという意味ではありません。むしろ、その体験の際に生じた緊張や警戒などの防衛反応が十分に収まらず、現在の生活にも影響を与えている状態として理解されることがあります。
身体に残るトラウマの症状やサイン
例えば、危険な状況に直面したとき、人の身体は無意識に身を守ろうとします。心拍数が上がる、筋肉が緊張する、周囲を警戒する、逃げる準備をするなどの反応は、本来であれば生き延びるために必要な働きです。
しかし、あまりにも強いストレスや逃げ場のない状況では、その反応が十分に整理されないまま残ることがあります。その結果、頭では「もう安全だ」と理解していても、普段の生活の中で、身体が緊張し続けたり、人の視線に敏感になったり、眠りが浅くなったりすることがあります。
また、特定の音や場所、人との関わりをきっかけに、不安や恐怖が急に強まることもあります。本人には理由がわからなくても、身体が過去の危険に備えた反応パターンを繰り返している場合があるのです。
実際のカウンセリング場面でも、「常に気を張っている感じがする」「リラックスしようとしても身体が休まらない」「過去のことなのに苦しさが続いている」「頭痛や肩こりが続く」「身体が常に疲れている感じがする」といった悩みが語られることがあります。
身体に残るトラウマから回復するために
これまで述べてきた状態を理解するうえで、「身体に残るトラウマ」という考え方は重要な手がかりになります。
このような反応を「性格の問題」や「自分の弱さ」だと思い込み、一人で抱え込んでいる方は少なくありません。けれども、こうした状態は、本人の意思や努力不足によるものではありません。身体がまだ十分に「安全だ」と感じられていないために起こる反応と考えることができます。そのため、身体に残るトラウマを理解するうえでは、「安全感」を少しずつ取り戻していく視点が重要になります。

